Ciat-LonbardeのCocoquantus2について調べてみたら濃すぎた。かわいい木製ルーパー・モジュラーシンセ。

こんにちは、暑くなったり涼しくなったりな季節ですね。

今回取り上げるのはドイツの個人ビルダーブランドCiat-Lonbardeのシンセサイザー、cocoquantus 2です。

これ、フォロワーさんが購入したらしいんですけどそれがめっっっちゃ可愛くて気になって。

フォロワーさんの投稿した動画です。猫とサボテンがお洒落かわいい。

ただこのシンセ、調べてみても日本語の情報ほとんどでない。本当に全然出ない。機材情報よりこのシンセを使って作られた実験的音楽の情報の方が多いレベル。
そしてこのcocoquantus 2に限らずブランド自体の情報もでてこない。もちろん取り扱ってる店もない。フォロワーさんはベルリンから直接購入したらしい。強い。

情報がなさすぎてあまりに気になったので、自分用に調べるついでにブログにしていいかと聞いたら快諾いただきまして。

なので今回の記事は主にそのフォロワーさんの使用した感想と、英語サイトをがんばって読んだ内容で構成されております。本当にありがとうございます。

フォロワーさんの素敵なリリースを聴きながらみんなで記事を読めばいいよ。私も書きながら聞いてるよ。

ではCiat-Lonbardeについてわかったことを書いていきますよ。

サウンドハウス

Cocoquantus 2 – ルーパーとモジュレーション機能が特徴の尖ったモジュラーシンセサイザー

まず今回気になったCocoquantus 2の見た目はこんな感じ。

あら可愛い。

いろんな種類の木材が継ぎ合わされた木製ボディに彫り込まれた紋様がとっても特徴的で可愛い。
ただ単なる飾りじゃないみたいっすよこの模様。
2つのオベリスクと一つの五角形らしいんですが、この模様はワシントンDCをイメージしたおまじないの様なもので、アメリカのメタファーだとか。

基盤の配置にもこだわりがあって、中心に五角形状に配置された回路がアメリカのペンタゴンを表していて、横にあるディレイのチップがワシントンモニュメントを表しているそうです。

公式サイトが貴重な情報源ですがこの内容がなかなか重くて。

“ディレイに使われてるシリコンチップは太陽フレアで消えてしまうようなフラッシュメモリを持たない「2012年対応」となっております!!"って一番の売り文句っぽく堂々と冒頭に書かれてるやつがもう私レベルだとちょっとわからないもん…。

「太陽系フレア 2012年」とか「太陽系フレア フラッシュメモリ」とかでGoogleさんに聞いてみたら、確かになんか出てきたんですけど。

翻訳で疲れ切った私の頭にはなんのこっちゃさっぱり入ってきてくれませんが、どうもフラッシュメモリは太陽フレアでデータエラーが起きたり、内容が書き換えられてしまったりするそうで。

実際その太陽フレアがライブ中機材を狂わすほどヤバくて強烈なものなのかは専門外なんでちょっとわかりませんが、多分シンセを使用中にそういった太陽フレアの影響を受けませんよってことなんだと思います。ただ2012年対応がどんなもんで、なぜ影響を受けないのかはちょっとわかりませんでした。誰か詳しい人教えてください。

こんなふうにパーツの選び方や配置一つとっても細部まで気が行き届いているのがこのビルダーさんの良いとこだと思います。というか調べたらそういうこだわりが山ほど詰まってて非常に濃いんですわこのメーカー。

そんなこの機材は内蔵された2つのルーパーで音を録音、どんどん加工してく感じの使い方が基本のようです。8bitのルーパーらしくて入力した音に程よい荒さや匂いが足されていい感じ。

ピエゾやXLRのマイク入力端子やステレオミニジャックが2つ搭載されているので、ここに音を集めるワークステーション的な使い方もできるシンセサイザーですね。一台あるとかなり面白いことができそうです。

この動画の方はオシレーター部分で発生させた音をループさせてリズムを作ったり、声を加工してベースにしたり面白いことやってますね。

ルーパーの操作がわりと細かくできるようで、リズミカルな音も出ますし、アンビエントな感じからぶっとい低音のドローンまでいろんな音が出せます。

なんか昔山の中でアンビエントなマシンライブがずーっと流れてるフェスに行って、屋台で有機野菜でできたご飯食べたり瞑想したり犬に絡まれたりした思い出があるんですが、なんかあのフェスを思い出しました。
そういう野外フェスにこれ一台とマイクだけ持っていって、フィールドレコーディングからアンビエントに発展していくマシンライブみたいなのも面白そうですね。ていうかやりたい。

そして真ん中のオシレーター部分にはカオスノブとかいう惹かれる名前のノブがついてます。回すと音がどんどんやばい感じに。オシレーターの操作はスピードをいじるためのノブと緑、赤、青などカラフルで可愛い端子に繋いでいくのですが、面白いのがこれにつなぐのがパッチケーブルではなくてバナナケーブルってとこです。あんまないんじゃないかしら。私が知らないだけかしら。

上に挙げた動画の人もそうですし、他にもYoutubeを見ているとOP-1と一緒に使う人がちらほら。

OP-1と合わせていい感じにトリップできるLo-Fiなアンビエントサウンド。ピアノっぽい音色との相性も良さげ。

一応メーカーとしてはSidrassi organという同ブランドのシンセとの併用をおすすめしているようです。

Sidrassiってのはこんな感じの、オルガンっぽいタッチセンサー内蔵のシンセです。

これもまた癖つよ可愛いな。

Sidrassiは2回ほど名前を変えて、今はSidraxという名前で販売されているようです。見た目もよりかわいくなってますよ。

本当、見た目も音も操作も普通のシンセといちいち違いますよね。

ブランドCiat-Lonbardeについても調べてみた。

調べれば調べるほど情報の海に溺れていく様なCocoquantus。

それで果たしてこんな尖ってかわいいSidraxやCocoquantusを作った人はどんなもんなんやって調べたくなってですね。

この2本の製作者インタビュー動画、頑張って文字起こしして翻訳しましたよ。がんばったのは翻訳ソフトDeepLくんですけど。私もがんばった。

動画を見て、やっぱり私のオーガニックな野外フェスに向いてる機材って直感は正しかった気がします。この作者さんがそういうライブに出て演奏してそう。

例えば2つ目の動画の最後でToh Conteというシンセを紹介していて、それは洞窟の中での使用を考えて作ったシンセだそうで。作者さんご自身が洞窟の中に煙玉の様なものを投げ入れて、なんか尋常じゃない量の紫の煙の中で演奏しております。めっちゃむせてますけど大丈夫なんですかね。

この方、制作活動を2000年ごろからスタートしたみたいなのですが、それがジョージブッシュ大統領がちょうど就任した時代らしく、アンダーグラウンドな文化を必要としていると強く感じたらしいです。そして表現の検閲から逃れるべく、基盤に造語や図形を書くようになったらしいです。造語なら検閲されないからねというのと、暗喩的な表現の強さってものを感じる故らしいです。
このシンセは基盤も本体も一つのメタファーを表現するためのものであり、あのかわいい模様なんかも単なる飾りじゃないんだよってことみたい。込められた思いの強さがすごい。

基盤の作成にはOsmondってソフトを使ってるらしいです。

上に挙げた動画で制作プロセスを見せてくれてますが、最初は紙の回路からはじめちゃうのが私のつぼです。私はこういうひたすら手を動かして試作を繰り返してできたプロダクトに弱いのですよ。

見てると試作の段階から絵を描くように図面を作っていってますね。この人の書いた図面ってどうもなんか絵っぽい。機械的にならない様意図的に絵画っぽくしてるのか、書いてるうちに勝手にそうなるのか。
そして回路の参考資料っぽく儀式用の仮面の写真が置いてあったりするの。なんの参考なんだ。これもまたメタファー。

公式サイトで回路図を公開してらっしゃいますが、非常に絵みたいで綺麗なんだあ。

http://www.ciat-lonbarde.net/cocoquantus/view.pdf

回路の柄でTシャツとかも作ってるみたいですが、この綺麗さなら納得ですよね。お洒落に着れそう。

そして動画を見ると回路だけでなく本体である木工も自分でやってる様子が出ていますが、木材を入手するためにタミル語でのネットワークが必要だとか言ってるんで自分で直接インドとやりとりして木材入手してらっしゃるみたいですね。サッサフラスという聴き慣れない木材を多く使ってるようですが、調べてみたらFenderのギターとかにも使われてたことがあるようです。勉強不足でしたね。サッサフラスは主に香料に使われる木らしいですよ。匂いは葛根湯+サロンパスの様だそうですよ。癖が強いよ。

他にもカタルパ(梓)、シカモア(楓) 、ウォルナット、ジュニパー(ネズの木)、マルベリー(クワ)なんかを組み合わせて本体を作ってらっしゃるみたいです。こだわりの木材チョイスと素晴らしい配置のセンスでどのシンセも見た目が非常にかわいい。

こだわりの詰まった、個人ビルダーならではの魅力。

こんな感じで、このメーカーの製品は全て木材からパーツ選定からコンセプトから隅々まで何かしらのメタファーが仕込まれています。なんかここまで想いがこもってると、遊戯王の千年アイテムみたいになりそう。それくらい強い力を持った製品だと思います。

もはやアート。プロダクトというよりアート。受注生産して職人が丹精込めて作ってくタイプの音が出るアート。実際一人で一つ一つ手作りしている関係で、購入してからかなり待たなきゃいけないそうです。前述したフォロワーさんも半年待ったらしいです。

そんなかわいい見た目にこだわりの詰まったこのCocoquantus、動画や説明文だけでは伝わらないことが結構あります。

例えば買った前述のフォロワーさん曰く、「この機材音色のセーブとか一切出来ないので毎回録音しないと何にも残らない」かつ「ルーパーは毎回リセットするため無音をあえて録音しないと爆音のノイズが出るっていう意味不明な仕様」らしくて、どういうこっちゃって調べてみたらこういう動画が出てきまして。

サーーーーとか可愛いもんじゃなくて本当に爆音ノイズで笑っちゃったよね。

ルーパーに何かしら録音されてないと代わりに爆音でノイズを出してくるらしいです。これライブだとめちゃくちゃ怖いのでは。

ちなみにこの動画が投稿されてたCocoquantusのノイズに関する質問フォーラムを見ると、俺もノイズがある!俺も!!って声が続出してまして。

このフォーラムの中のある人曰く、パーツがいくつか欠けてたからてビルダーさんに送り返して修理してもらったけどこのノイズは直ってなかったそうで。先ほどあげたビルダーさんの制作風景でもノイズがなってたのでつまりこれはもうそういう仕様っぽいです。

ただ仕様って割には個体差があるようで、ノイズが乗るのは人によって左のルーパーだったり右のルーパーだったり。ノイズがない個体もいるようですけど何が違うのか不明だそうです。個人ビルダー癖が強いよお…。

フォロワーさんからは他にもループのポイントが勝手に左右でずれるとか、つまみが結構ちいさいとか、なかなか触ってみないとわからないレビューをいただきました。こういうの触ってみないとわからないよね。でも現状取り扱ってて触れる様な店はない様ですね。オーダー受けて一個一個作ってるんだし、作れる量的に店におろすのも難しそうだし仕方ないですね。

音が気になった方は、フォロワーさんに教わりましたこのアルバムなんかどうぞ。

全編このcocoquantus2で作られたアルバムのようで、音がよくわかると思います。チープだけどぶっとくて綺麗な音に癒されますねえ…プチプチクリックする粗めのノイズも非常にリラックスできる感じです。

今回フォロワーさんには本当大きく助けていただきました。重ねて御礼申し上げます。本当貴重なレビューに感謝します。

もしCiat-Lonbardeのシンセを購入したいって方はこちらで購入できますよ。

このPatch Pointという世界初のバナナパッチケーブル・シンセサイザー専門店が唯一のCiat-Lonbarde取扱店っぽいです。なんつーディープな世界だ。

ライブスペースとしても営業してるそうですよ。

めっちゃ楽しそうで和むわあ。

コロナ中はライブを控えてインスタレーションアートに重点を置いているそうですが、いつかベルリンを訪れる機会があればぜひ立ち寄りたい店です。

そんなPatch Pointで購入すると、Cocoquantus 2は日本円にして16万円ほどです。
職人のこだわりが詰まったアートの様なシンセが16万円。高いと見るか安いと見るかは人それぞれですが、非常に面白くかつ目と耳を惹きつけるシンセサイザーだと思います。

気になる方はぜひ。

非常に長くなりましたがどうでしたか…。長くなりまして、申し訳ないです。本当内容濃くてね…。

ここまでお付き合い、読んでいただきほんっとうにありがとうございました!

そして重ね重ね情報提供をしてくださったエンドウさんありがとうございました!!!